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モダンデザインの父 ウィリアム・モリス
[William Morris](1834-1896)
1834年、ロンドンの郊外に生まれた
ウィリアム・モリス。「美しいと思わないもの
を家に置いてはならない」と語り、手仕事から
うまれる自然に根ざした美しさを
発表しつづけました。
草花や樹木をモチーフとしたファブリックや
壁紙は、150年以上経てもなお新鮮な
魅力に満ちています。近代デザインの創始者と
うたわれる彼が残したデザインと
アーツ&クラフツの精神は、今に引き継がれ
世界中の人々へ不変の美しさを届けています。
彼が新婚生活を送るために建てた「レッド
ハウス」は、設計から家具、壁紙、カ-ペット、
タペストリ-に至るまでモリスと友人達の手に
よるもので、“世界で最も美しい家”と呼ばれました。
これを機に仲間と共に、“芸術と仕事、
そして日常生活の統合”という理念を掲げた
モリス商会を設立します。
1880年代にはモリス商会と同じ理想を持つ
工房やアトリエが多く生まれ、1888年に
開かれた美術工芸協会の展覧会の名を取り
彼らの運動を「ア-ツ・アンド・クラフツ運動」
と呼ぶようになりました。
[Strawberry Thief](上部壁紙、左側クッション)
英国の田舎では、いちご摘みは夏の楽しみの一つ。
そこには何とも可愛らしく歌うような鳴き声と、
胸に鮮やかな斑点模様を持つ、ウタツグミの
姿も見られます。モリスは彼の夏の別荘
ケルムスコット・マナーに滞在中、
庭のいちごを食べてしまういたずらな鳥を
観ていてインスパイアされ、
この「いちご泥棒」をデザインしました。
[Chrysanthemm] (右側テーブルクロス)
最善観と、長寿、そして慶びの象徴とされ、
永遠の美を湛える菊の花 (クリサンティマム) 。
クリサンティマムは、中国や日本では三千年
以上もの間栽培されてきましたが、英国には
18世紀後半まで入ってきていませんでした。
現代の一般的な英国の庭を見れば、モリスが
この豪華な花を満開にさせ、眺めていたで
あろう風景を、思い浮かべることが
できるのではないでしょうか。
[シフィールド産の銀食器とのディスプレイ]
[シフィールド]
フランスのラギオールのティエールと同様に、
銀の伝統はイギリスのシェフィールドという
産地が有名です。1742年にシェフィールドで
「銀メッキ」の技術が発明され、今もこの
シェフィールドが銀ではトップ産地では
ないでしょうか。
[ティーコジー Green Willow]
そっと枝葉を垂らして水面をやさしく撫でる、
みずみずしい柳の葉。のんびりとした
夏の午後の、英国オクスフォードの
チャーウェル川に沿って見える柳を
思い起こさせる美しいデザインです。
[クッション Pimpernel]
モリスの伝統的なデザインの一つ一つが、
19世紀の英国のスタイルや物語を垣間見せて
くれます。ロマン主義と神秘主義の時代であった
ビクトリア朝時代に描かれた、秘密の恋の象徴と
された瑠璃ハコベと、夢の神モルフェウスの
象徴とされたポピーの花の贅沢なデザインです。
メゾン・ド・マルシェではその他、プレイスマット、
ポットマット&鍋つかみ、コースターなど
多数展示致しております。
皆様のご来店心よりお待ちしております。
ウィリアム・モリスのお話
あまりにも有名な「いちご泥棒」のデザインを考案したデザイナー「ウィリアム・モリス」。
彼はデザイナーにとどまらず、芸術家、思想家、実業家、詩人、画家、そして社会主義者などさまざまな肩書を持ち、
後世に深い影響を与えた先駆者です。
デザイナーとして
モリスのデザインは、織物、壁紙、家具、タペストリー、テキスタイルなど幅広い分野にわたります。
彼のデザインは、自然の要素や植物のモチーフ、中世の影響を強調し、シンプルでエレガントなスタイルが特徴です。
中でも壁紙のデザインは、美しさと機能性を組み合わせたもので、多くの家庭や建物で使用されました。
現代においても人気で、繊細なパターンや色使いは、インテリアに温かみをもたらします。
思想家・芸術家として
モリスは自然、手工業、美、労働者の権利などに関する独自の思想を持っており、これらのテーマを彼の芸術と社会活動に反映させました。
19世紀末にイギリスで興った美術と工芸の運動、「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、工業化による機械生産に対抗し、手工業の伝統と美を重視しました。
彼は、「アーツ・アンド・クラフツ運動」の中心的な役割を果たし、彼の美しいデザインと思想が運動を牽引しました。
詩人として
詩人としてもモリスは、著名でした。
彼の初期の詩集「The Defence of Guenevere」では、中世の騎士物語を独自の視点から描写し、内面の葛藤や情熱を浮き彫りにしています。
その後も「The Earthly Paradise (地上の楽園)」といった詩集で、物語性を追求しつつ、人間の喜びや哀しみ、夢と現実の対立を描写しました。
モリスの詩は彼の美的観念や情熱を反映し、自然と人間の関係や個人の内面に焦点を当てています。
その言葉選びや韻律は詩の魅力を高め、彼の詩人としての才能と独自の詩的な声を示しています。
実業家として
モリスは、ケルムスコット出版所を設立し、美しい装丁の書物を出版しました。
この出版所は美しい本の作成に革新をもたらし、その美的価値と手作業の魅力を広める一翼を担いました。
社会主義者として
ウィリアム・モリスは熱心な社会主義者として、労働者の権利と社会的公正に情熱を傾けました。
彼は19世紀末のイギリス社会における格差や労働者の過酷な状況に深い関心を抱き、社会の変革を求めました。
モリスはイギリス社会党に加入し、社会主義の理念を広めるために講演や執筆活動を行いました。
また、資本主義の弊害を批判し、生産手段の共有や労働者階級の生活改善を提唱しました。
さらに、モリスはケルムスコット・コミュニティと呼ばれる社会主義的な共同体を設立し、持ち寄り制度や共同作業を実践しました。
彼の社会主義への熱意は、芸術とデザインだけでなく、社会の根本的な変革を志向する姿勢を反映しており、その思想は後の社会運動や政治の発展にも影響を与えました。
ウィリアム・モリスの生涯は、このようにさまざまな側面を網羅し、その影響は今もなお続いています。
–End–