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アン女王時代の輝き ~クイーンアン様式の興隆と影響~
~目次~
1. プロローグ: クイーンアン様式の魅力に迫る
2. アン女王と彼女の時代
3. クイーンアン様式の足跡: 歴史と進化
4. 豪華絢爛なるクイーンアン様式の家具の世界
5. 美の殿堂: クイーンアン様式の建築物に魅せられて 6. アメリカの風格: クイーンアン様式の魅力 7. エピローグ: クイーンアン様式の魅力を再確認する
1. プロローグ: クイーンアン様式の魅力に迫る
18世紀のイギリスで生まれ、その後世界中に広まったクイーンアン様式。
その優雅さと洗練されたデザインは、時を超えて人々の心を捉え、永遠の愛される存在となっています。
クイーンアン女王の時代に隆盛を極めたこの様式は、家具や建築物の世界でその美しさを輝かせています。
クイーンアン女王の統治時代から始まり、その時代の背景や特徴、そして現代に至るまでのクイーンアン様式の進化や影響について探求していきましょう。
アン女王の個性や政治的な決断が、当時の家具や建築にどのように反映され、どのような美の殿堂が築かれたのか、その謎に迫ります。
さらに、アメリカにおけるクイーンアン様式の進化や影響、そして辰野金吾による東京駅の建築に見るクイーンアン様式の影響など、クイーンアン様式が世界中でどのように愛され、進化してきたのかについても探求します。
2. アン女王と彼女の時代
アン女王:1665年 – 1714年
クイーンアン様式の輝かしい興隆は、その名前に由来するイングランド女王、アン女王(1665年 – 1714年)の統治時代にさかのぼります。
アン女王の在位期間中、イングランドは文化的な黄金時代を迎え、美術、建築、そして家具の分野で際立った発展を遂げました。アン女王の影響は、彼女の個人的な好みや美的センスが当時の家具や建築に反映されています。
アン女王は、1665年にヨーク公ジェームズとアン・ハイドの娘として生まれました。
彼女は幼少期からプロテスタントとして育てられ、スポーツや乗馬を好む活発な性格でした。1683年にはデンマーク・ノルウェー王フレデリク3世の次男であるヨウエン(ジョージ)と結婚しました。
しかし、数々の妊娠にもかかわらず、幸せな家族生活を送ることはできませんでした。彼女は17回の妊娠のうち、多くが流産や死産に終わり、生まれた子供たちも若くして亡くなりました。
※1名誉革命(1688年)後、アン女王は姉のメアリー2世とともに共同統治を行いましたが、メアリー2世の死後(1694年)、単独でイングランド女王として即位しました。
彼女の治世はスペイン継承戦争やアン女王戦争などの重要な時期でした。マールバラ公ジョン・チャーチルを総司令官に任命し、彼の戦略により多くの戦勝を収めました。
また、スペイン継承戦争においては、ジブラルタルの陥落などの海外領土の獲得に成功しました。
しかし、アン女王の晩年は政治的な葛藤と健康上の問題に悩まされており、彼女の信任を失ったサラ・チャーチルなどの側近との決別や、肥満による健康問題が深刻化しました。
そして、1714年に崩御した時、アン女王は後継者問題を残して英国を去りました。そして彼女の死後、ステュアート朝は断絶し、ハノーヴァー朝が誕生することとなったのです。
アン女王の統治時代は、クイーンアン様式の家具や建築の隆盛と密接に結びついており彼女の個性や政治的な決断は、当時のイギリスの芸術や文化に大きな影響を与えました。
(^_-)-☆★ 余談ですが、私生活では、ブランデー・ナン(Brandy Nan=ブランデーおばちゃん)とあだ名がつくほど、大のブランデー好きだったそうです
※1名誉革命(Glorious Revolution):
1688年にイギリスで起こった政治的な変革を指します。この革命は、ウィレム3世(オランダ総督)とメアリー2世(イングランド王ジェームズ2世の娘)が、ジェームズ2世の権力を奪い、イングランド、スコットランド、アイルランドの君主として即位することで成立しました。
名誉革命の背景には、ジェームズ2世のカトリック信仰と専制政治への不満がありました。彼のカトリック信仰とフランスとの同盟は、国内外で不安を引き起こしました。また、ジェームズ2世が国王の権力を強化する試みを行ったことも、国内の不満を高めました。
ウィレム3世とメアリー2世
名誉革命は、ウィレム3世とメアリー2世がイングランドに上陸し、ジェームズ2世が国外に逃亡した後、議会によって実現しました。この革命によって、議会が国王よりも上位の権威を持つという立憲君主制が確立され、イングランドの政治体制が大きく変化しました。
3. クイーンアン様式の足跡: 歴史と進化
クイーンアン様式の家具は、その独特なデザインと高度な職人技術によって特徴付けられます。
この様式は、18世紀前半のイギリスで流行した建築・家具の装飾様式で、その名前は、当時のイギリス女王であるアン女王に由来しています。
この時代に生まれたクイーンアン様式の家具は、脚部が曲線的で繊細な彫刻が施された椅子やテーブル、装飾的な彫刻が施されたキャビネットなどが特徴的で、これらの家具は、オランダの影響を受けた優雅な様式を取り入れ、ロココ様式をベースにしながらも、より小型で軽快な印象を与えます。
19世紀後期には、イギリスの建築家 R. ショーがクイーンアン様式を復興しました。
彼の手によって生み出された建築様式は、中世末期および近世初期の伝統的な要素を巧みに取り入れ、ハーフティンバリング、シングル壁、張出し窓、チューダー式煙突などの特徴的な要素を持ちます。
この様式は、イギリス人の伝統的な好みを反映し、中世の城を思わせる特徴的な外観が特徴です。
また、クイーンアン様式は、イギリスが入植を始めた時代のアメリカでも広く発展しました。
アメリカのクイーンアン様式の家屋は、八角形の塔や左右非対称な外観など、イギリスからの伝統的な要素を取り入れながらも、独自の特徴を持ちます。
時が経つにつれて、クイーンアン様式のデザインは変化し、新しいアイデアや技術が取り入れられていきました。しかし、その美しさと優雅さは常に残り、現代でも多くの人々に愛されています。
4. 豪華絢爛なるクイーンアン様式の家具の世界
クイーンアン様式の家具は、その華麗なデザインと高品質な材料で知られており、この様式は、18世紀初頭のイギリスで生まれた装飾美術の表現形式であり、家具や内装に使用されます。
その特徴は、上品で優雅なフォルム、カブリオールレッグ(猫足)や彫刻、透かし彫りなどがみられる点にあります。
クイーンアン様式の家具は、繊細な彫刻や鮮やかな木目など、豊かな表情を持っており、カブリオールレッグと呼ばれる曲線的な脚部や、背もたれに花瓶やヴァイオリンなどをモチーフにした優雅な曲線が特徴的です。また、脚にはアカンサスの葉や貝の形をした彫りの装飾が施され、品格と美しさを演出します。
建築物の窓の高さが高くなったことに合わせて、背の高い家具も作られるようになりました。キャビネットやカップボードのトップには、ペディメント型のデザインが取り入れられ、より一層の華やかさが加わりました。
クイーンアン様式の家具は、その耐久性と使い勝手の良さでも人気があります。高品質な材料と精巧な職人技術によって作られたこれらの家具は、部屋全体の雰囲気を一層豪華で華やかに演出し、長く愛され続けています。
~クイーンアンチェアの魅力~
クイーンアン様式の代表的な家具『クイーンアンチェア』
a. アン女王の時代のエレガンス
クイーンアンチェアは、アン女王の時代に生まれたことから、そのエレガントな雰囲気が特徴です。当時のシンプルで実用的なデザインは、現代でも女性らしい柔らかさを感じさせます。座面のクッションや背もたれの曲線など、細部にこだわったデザインが魅力的です。
b. 機能性と快適さ
クイーンアンチェアの座面には、初めてクッションが取り入れられ、その快適さは多くの人々を魅了しました。長時間座っても疲れにくい設計は、当時の革新的なアイデアの一つでした。
c. 女性らしいデザイン
クイーンアンチェアは、女性の視点から生み出された実用的なデザインを特徴としています。アン女王が機能性を重視して造らせた家具は、豪華絢爛な装飾を省き、シンプルで優雅な雰囲気を持っています。背もたれに描かれた花びんやヴァイオリンのモチーフは、女性らしさを際立たせます。
d. 歴史的な背景と価値
クイーンアンチェアは、18世紀初頭のイギリスで生まれた歴史的な家具の一つです。そのため、所有すること自体が歴史を感じることができる特別な体験です。また、その品質やデザインの優雅さから、今なお高い評価を受けています。
e. カブリオールレッグの独特のデザイン
クイーンアンチェアには、特徴的なカブリオールレッグが使われています。これは、当時のイギリス独自のデザインであり、シンプルでありながらも独特の魅力を持っています。そのシンプルなデザインが、多くの人々から支持を得た理由の一つです。
クイーンアンチェアは、その優雅なデザインと機能性、歴史的な背景から多くの人々に愛されています。
その存在は、ただの家具にとどまらず、エレガントさと実用性を兼ね備えた時代の象徴とも言えるでしょう。
5. 美の殿堂: クイーンアン様式の建築物に魅せられて
クイーンアン様式の建築物は、その特徴的な曲線美や装飾的な要素によって、18世紀初頭のイギリスで革新的な存在として誕生しました。
この建築様式は、家具と同様に左右対称のシンメトリーなデザインが特徴であり、ウィンスロー・ホール(Winslow Hall)などの建築物にその特徴が見られます。アン女王の時代には、左右対称のデザインが完璧に実現され、建物全体が調和の取れた美しさで包まれています。
また、クイーンアン様式の建築物は、赤レンガの壁が特徴的です。オランダから伝わったイギリス積みの煉瓦の壁は、レンガの長手と小口を交互に積み上げることで、高い強度と経済性を兼ね備えています。この特徴的なレンガの積み方は、クイーンアン様式の建築物に独特の風合いを与えています。
ハンベリーホール
さらに、クイーンアン様式の建築物では、屋根の上に三角形のペディメントがデザインされています。このペディメントは、建物のファサードを飾るだけでなく、その美しさと独特の形状が建物の特徴となっています。
最後に、クイーンアン様式の建築物には、高さのある窓が多く取り入れられています。これらの窓の周りには白い窓枠が配置され、窓の開口部を強調するデザインが施されています。このような窓枠のデザインは、建物の外観にエレガントさと華やかさを与えています。
クイーンアン様式の建築物は、その美しさと優雅さによって人々を魅了し、現代でもその魅力を失うことはありません。左右対称のデザイン、赤レンガの壁、三角形のペディメント、そして白い窓枠などの特徴的な要素が、クイーンアン様式の建築物の魅力を形作っています。
~辰野金吾: クイーンアン様式の影響と日本の建築への貢献~
東京の心臓、日本の玄関口:東京駅丸の内駅舎
辰野金吾は、日本の建築家であり、日本の近代建築の先駆者の一人です。彼は東京駅丸の内駅舎の設計を手がけ、その建築様式はクイーン・アン様式の影響を受けていると言われています。
辰野金吾は、イギリス留学時代にヴィクトリア様式のひとつであるクイーンアン様式を学び、それを日本の環境に合わせて日本化した「辰野式」と呼ばれる建築様式を開発しました。
彼の建築作品は、洗練された西洋建築の影響を受けつつも、日本独自の美意識や文化を取り入れたものでした。東京駅丸の内駅舎は、その代表的な作品の一つであり、赤レンガに白い石材を組み合わせた華やかな外観が特徴です。
この建物は「辰野式フリー・クラシック」と称され、辰野金吾の建築作品の中でも特に高く評価されています。
神戸みなと元町のシンボル:旧第一銀行神戸支店
神戸市中央区元町通にあるメゾン・ド・マルシェ神戸本店、そのすぐ近くに辰野金吾が設計した『旧第一銀行神戸支店』がありました。
1995年の阪神淡路大震災で被災した旧第一銀行神戸支店は、全面的な取り壊しの検討もされましたが、歴史的景観の保全を考慮し、南側と西側の二面の外壁が残され、新たな役割を与えられ、神戸市営地下鉄湾岸線の「みなと元町駅」の出入口として生まれ変わりました。「辰野式 」とも呼ばれる赤いレンガと白い御影石のコントラストが鮮やかなデザインの外壁には、辰野氏が影響を受けたクイーンアン様式の特徴が随所に見受けられます。
この外壁は近代化産業遺産に認定され、近畿の駅百選にも選定され、地域のシンボルの一つとして親しまれています。訪れる人々にとって、歴史と美しさを同時に体験できる場所として、神戸の魅力を象徴する存在となっています。
神戸を訪れる際には、メゾン・ド・マルシェ神戸本店と旧第一銀行神戸支店外壁をぜひ訪れ、辰野式建築の美しさに触れてみてください。
6. アメリカの風格: クイーンアン様式の魅力
クイーンアン様式は、アメリカでも大きな人気を博しました。この様式は、イギリスからの植民地移民たちによって持ち込まれ、アメリカの土壌で独自の進化を遂げました。
その結果、アメリカの文化や風景に調和した独自のスタイルが生まれ、クイーンアン様式の家具や建築物がアメリカの歴史とアイデンティティを象徴する重要な要素となりました。
イギリスでは、クイーンアン様式は比較的おとなしく伝統的な様式に忠実でしたが、アメリカでは異なるアプローチが取られました。イギリスの様式を踏襲しつつも、アメリカでは華麗なデザインや装飾を強調することで、伝統様式がより分かりやすく表現され、多くの人々に受け入れられるようになりました。
アメリカのクイーンアン様式の特徴は、その豊かな装飾と多彩な色彩にあり、装飾的な要素が施された外観は、豪華さと独自の個性を示しています。
また、窓やドアなどの細部にまで華やかな彫刻が施され、建物全体に高貴な雰囲気を与えています。
このようなクイーンアン様式の特徴は、アメリカの風景においても顕著に現れました。アメリカの町並みや都市部に建てられたクイーンアン様式の建物は、その華やかさと風格によって周囲の景観を彩り、人々の目を引き付けました。
アメリカのクイーンアン様式の建築物は、その豊かな歴史と独創性を反映しています。伝統的な様式を受け継ぎつつも、アメリカ独自のアプローチが加えられ、美しい建造物が生まれました。
7. エピローグ: クイーンアン様式の魅力を再確認する
クイーンアン様式の家具と建築物は、その美しさと歴史的な価値によって今もなお多くの人々を魅了しています。この様式は、18世紀のイギリスで生まれ、その後アメリカなど世界各地に広がりましたが、その優雅さと洗練されたデザインは、時を超えて人々の心を捉え、永遠の愛される存在となっています。
この記事をお読みになった皆さんも、クイーンアン様式の家具の魅力を実際に体験してみたくなることでしょう。ぜひメゾン・ド・マルシェで、その美しさや洗練されたデザインに触れてみてください。