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~Art Nouveau ~アール・ヌーヴォーについて
アール・ヌーヴォーとは
アール・ヌーヴォーとは、19世紀末~20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に流行した芸術様式の総称です。
フランス語の【Art Nouveau=新しい芸術】を意味するもので、その様式の影響は、絵画・彫刻と言った美術作品から、建築・家具・工芸品・室内装飾・ファッション・グラフィックデザインなど多岐にわたります。
誕生の源流
19世紀後半のヨーロッパでは、産業革命の影響で大量生産が目的となり、安価で粗悪な商品が出回るようになっていました。
そんな中、イギリスにおいて美術工芸家のウィリアム・モリスが中心となって展開した、アーツ・アンド・クラフツ運動が起こります。
この運動は、産業革命後の工場で作られる安っぽい・粗悪な大量生産品に対抗して、職人や工芸家が中世の芸術を通じて生活を美化するような、良質な実用品を世に送り出そうとするものでした。
それは、富裕層のためではなく、民衆の生活に根ざしたもので、家具、刺繍、ステンドグラス、テキスタイル、室内装飾、活字の書体、、、など日常生活のさまざまな分野にわたっています。
このような総合芸術は、多くの芸術家たちに共感を与え、各地に広がっていきます。
アール・ヌーヴォーが、世界各地で同時多発的に広がって行った背景には、万国博覧会の開催が要因となっています。
万国博覧会は19世紀末より頻繁に開催され、世界各国の芸術品や技術などの異文化を吸収する場となり、スピーディに情報が伝わっていきました。
アール・ヌーヴォーのスタイル
ジャポニズムは、ヨーロッパにはなかった芸術表現として、芸術家を刺激しアール・ヌーヴォーを生み出す起爆剤になりました。
浮世絵、工芸品、漆器、刀剣などの日本の美術品を扱っていた美術商のサミュエル・ビングは、「アール・ヌーヴォー」という名の店を開き、日本美術を広め、ヨーロッパに受け入れられます。
アール・ヌーヴォーにおいてジャポニズムが果たした役割も大きいですが、他の異国文化、北アフリカや近東諸国のいわゆる
オリエンタリズムも多大な影響を与えました。
オリエンタリズムは主に、装飾豊かなイスラム美術やビザンティン美術で、クリムトやミュシャもビザンティン美術の影響を受けたとされています。
アール・ヌーヴォーの作品は、曲線的、非幾何学的、非対称性といった言葉で表現されることが多く、優雅な曲線や装飾性が重視されたロココ美術の流れも汲んでいます。
基本的に用いられている有機的なモチーフが、両者を融合し、独特の有機的曲線が生まれました。
ダイニングテーブルセット
『CL ITALIA(シーエルイタリア)』
神戸本店5階展示
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《 ダイニングテーブル 》
《 アームチェア 》
また、新しい装飾表現、特有の曲線は、自然観察の中からも生まれ積極的に取り入れられました。
ヨーロッパ美術において、自然はもともと重要なモチーフとされていなかったが、世紀末に自然への回帰が主張されました。
ひときわ自然への関心が高かったことで知られるガレは、作品に形態や生命感を表現しました。
ガレ ランプ(ティップ)
呼称
アール・ヌーヴォーは、国ごとに呼称が異なります。
主に、
イギリス「モダン・スタイル」
ドイツ「ユーゲントシュティール」
イタリア「スティレ・リベルティ」
スペイン「モデルニスモ」
など、20を超える名称があると言われています。
アール・ヌーヴォーのその後
アール・ヌーヴォーは20世紀初めに最高潮を迎えた後、アール・デコにその座をゆずりますが、
さらに第二次世界大戦の機能主義の全盛期において、職人技が生み出す芸術は、流行遅れの様式となり廃れていきます。
しかし、1960年代にアメリカでアール・ヌーヴォーが再評価されるようになります。
コレクターたちの間にその面白さと価値が知れ渡り、1970年代、1980年代以降、研究所の出版や、企画展の開催、
作品を収集した美術館の開館などで、その名前と価値が広く知られるようになります。
今日では、美術史上欠かすことの出来ない芸術運動として認識されるようになったのです。
アール・ヌーヴォーゆかりの人物
アール・ヌーヴォーゆかりの人物と、その代表的な作品をご紹介していきます。
~ ウィリアム・モリス ~
デザイナーにして思想家、実業家にして詩人、画家にして社会主義者。
モダンデザインの生みの親で後世に深い影響を与えた先駆者。
テキスタイル『Strawberry Thief(いちご泥棒)』
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⇒《 トピックス 「ウィリアム・モリス」 》
~ アルフォンス・ミュシャ ~
本の表紙、雑誌の挿絵、宣伝ポスター、新聞のタイポグラフィ、絵はがきなどのグラフィックデザインやイラストレーションなどを手掛ける。
異文化が混合した独自のスタイルを世に広めたチェコのポスター作家。
リトグラフ『Zodiac (黄道十二宮)』
~ エミール・ガレ ~
アール・ヌーヴォーを代表するフランスの工芸家。
ガラス工芸、陶器、家具など幅広い分野で独創的な工芸作品を制作。
ガレのガラス工芸は、5千年の歴史の中でも最高傑作といわれています。
ランプ『Inky cap lamp (ひとよ茸ランプ)』
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⇒《 トピックス 「エミール・ガレ」 》
~ ルイス・カムフォート・ティファニー ~
アメリカにおけるアール・ヌーヴォーの第一人者。
主にステンドグラスやモザイク加工のガラスランプ『ティファニーランプ』の製作などにおける芸術家として名を馳せる。
有名宝飾店ティファニーの創業者であるチャールズ・ルイス・ティファニーの長男。
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⇒《 トピックス 「ステンドグラスの魅力」 》
~ アントニオ・ガウディ ~
スペインを代表する建築家
19世紀から20世紀にかけてのモデルニスモ(アール・ヌーヴォー)期のバルセロナを中心に活動。
サグラダ・ファミリア(聖家族教会)・グエル公園(1900 – 1914年)・カサ・ミラ(1906 – 1910年)をはじめとしたその作品は、アントニ・ガウディの作品群として1984年ユネスコの世界遺産に登録されている。
『サグラダ・ファミリア』
~ エクトール・ギマール ~
アール・ヌーヴォーの巨匠、フランスの建築家。
1900年のパリ万国博覧会の開催に合わせて開業した、パリの地下鉄の出入り口のデザインを手がけた。
アール・ヌーヴォー作品の代表建築、貴重な建築遺産として保存されており、パリ観光で立ち寄ってみるのもおすすめです 。
パリのメトロへの入り口
~ ヴィクトール・オルタ ~
ベルギーのサン=ジル、アメリカ通りにある邸宅は、現在は「オルタ美術館」となっています。
この邸宅は、オルタの他の3つの邸宅と共に「建築家ヴィクトール・オルタの主な都市邸宅群」としてベルギーの世界遺産に登録されています。
タッセル邸の階段
アール・ヌーヴォーの魅力を全てお伝えすることは困難ですが、お気に入りのデザイン・スタイルを見つけて、その場所を訪れてみたり、身近にアイテムを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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