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リージェンシースタイルについて
今回はフランス皇帝ナポレオンが活躍した時代に
イギリスで始まり世界各国で流行したデザイン
『リージェンシースタイル(様式)』をご紹介します。
リージェンシースタイルは、
1811~1820年頃までイギリスで流行した様式です。
日本語でいうところの「摂政(せっしょう)」を表す英単語「Regent(リージェント)」が由来となっており、
英国王ジョージ3世の晩年にあたる19世紀前半、
皇太子であったジョージ王子(後のジョージ4世)が、
病床の父の代わりに統治した摂政時代の様式で、摂政様式ともいいます。
ジョージ王子はリージェンシー(摂政)の地位に就いたことから、「リージェンシー公」と呼ばれ、
その時代を「リージェンシー時代」とも呼びます。
リージェンシー公ジョージ王子の統治期間中、彼自身の好みやスタイルを反映した、
エレガントで装飾的なデザインや古典的な要素が取り入れられた建築物や室内装飾が流行します。
この時代のスタイルが「リージェンシースタイル(様式)」と呼ばれています。
芸術愛好家であるリージェンシー公ジョージ王子のサロンで
広まったリージェンシー様式は、フランスの
アンピール様式や古代ギリシャ家具のシンプルな構成、
古代ローマの大理石やブロンズ製の豪勢な家具形態や
古代エジプトの装飾、中国、日本の影響もみられる折衷スタイルです。
リージェンシー様式を推進した人物は、
建築家のヘンリー・ホランド、家具デザイナーの
ジョージ・スミス、そして最も注目されたのが
デザイナーのトーマス・ホープです。
商品紹介
メゾン・ド・マルシェでは、
『Jansen(ジャンセン)』社製のリージェンシースタイルの
ダイニングテーブルやチェアをご用意いたしております。
◆『Jansen(ジャンセン)』
ダイニングテーブル(33160 / 300-614)
サイズ:幅180 × 奥行95 × 高さ77 (cm)
383,900円(税込)
神戸本店にて 展示販売中
◆『Jansen(ジャンセン)』
チェア(33434 / 2L/300-6037)
サイズ:幅50 × 奥行51 × 高さ/座面の高さ 88/47 (cm)
119,900円(税込)
名古屋店にて 展示販売中
◆『Jansen(ジャンセン)』
アームチェア(33434 / 1L)
サイズ:幅59 × 奥行57 × 高さ 88 (cm)
119,900円(税込)
あべの店にて 展示販売中
トーマス・ホープは、ギリシャとエジプトの装飾品を
英国の家具デザインに採用し、1807年に出版された
家庭用家具とインテリアの装飾にそれらのアイデアを初めて紹介しました。
しかし当時の批評家から「単なる古代の模写に過ぎない」と批評を受けました。
当時のイギリス市民にとっては異国趣味以上の何物でもなかったようです。
フランスでは、1804年にナポレオンがフランス皇帝(エンペラー)となると、
皇族や貴族の間で流行していた贅沢なバロック様式の華美な装飾は否定的に取られ排除されます。
この頃始まった「エンパイアスタイル」と呼ばれるデザインは、基本的に大変シンプルでした。
ナポレオンは古代ローマ時代の皇帝と自分を重ね、強い自分を誇示するため、パリに古代ギリシャ・ローマ風の建築を建てさせました。
エンパイアスタイルは、このような背景で発展した
ギリシャ・ローマ様式とエジプト様式をミックスした、
古代のデザインの19世紀的解釈といえます。
エトワール凱旋門やマドレーヌ寺院、
ヴァンドーム広場のコラム(円柱)などが、
この時期につくられた代表的なエンパイアスタイルの
建築物です。フランス人にとってアンピール様式は
ナポレオン帝政を権威つける十分な存在理由があり
リージェンシスタイルの家具も人気を博しました。
この後に来るヴィクトリア時代は、産業革命で英国の
中産階級が大きく力をもち、それまで特別な人々のためで
あった家具が、力を持ち始めた中産階級にも手が届くように、
数多く作られるようになり、家具の作成工程が一部機械化され始めます。
このことから、この時代の家具は、手仕事の粋を極めた最後のオリジナルであったといえるかもしれません。
リージェンシー時代の家具に使用された素材や意匠について
リージェンシー時代の家具に使用された木材は濃くて重く、
マホガニーはベニヤでも使用されていました。
ローズウッドは1800年以降、キャビネット用に使用される
木になりました。サテンの木材は、特にリージェンシースタイルの
初期段階で使用されていました。黒檀(こくたん)やゼブラの木のような
他のエキゾチックな木材は真鍮のはめ込み細工と
組み合わせて使用しました。アンティークのギリシャと
ローマのイメージから制作された装飾品で、最も古くから
使われてきたデザインは古典的な古代のマスク、ライオンの顔、
ライオンと他の足、カリアチス、白鳥とイルカなどでした。
家具も装飾され、真鍮から切り落とされた装飾が施されます。
椅子やテーブルの脚に金属の装飾、ルーズリングハンドル、
ライオンマスク付きのものでした。ローズウッドとマホガニーの
家具には、細いバンディングやストリングスのラインがあり、
木材と真鍮とのコントラストがよく似ています。
リージェンシー様式の特徴的な意匠を紹介
【サーベルレッグ(セイバーレッグ)】
文字通り「サーベル/剣(Saber)」のような脚シャープな
ラインを描く外方向にむかって優美な曲線で開放脚を
意匠とするデザインの脚です。サーベルレッグは、
もともとは古代ギリシャに由来をもつモチーフです。
19世紀初頭のギリシャ風シェラトンチェアでリバイバルし、
その脚の表現として定番のひとつとなりました。
【リーデッド・レッグ(Reeded leg)】
一連の丸い尾根または溝が規則的な間隔で垂直に刻まれたタイプ
古代ギリシアおよびローマのモチーフの後にモデル化されました。
リージェンシー、エンパイアのスタイルで栄えました。
【リング・ターン(Ring turned)】
この時代までは椅子の前足や後ろ脚など一部分が
捻じられてたチェアーもありましたが残りの部分は
断面か正方形または長方形でした。
リチャードプライスが発表したチェアーはすべての
部分が捻じられた状態でデザインされていました。
【トラファルガーチェア (Trafalgar Chair)】
トラファルガーチェアは、古代ギリシャで5世紀頃に流行した「クリスモス(Klismos)チェア」を原型として再解釈されたデザインの椅子です。
このチェアは、当時の家具デザインにおいて最も高価な木材であったローズウッド(Rosewood)が使用されており、その中でも特にブラジリアン・ローズウッドの独特な縞模様が人気を集めました。
1808年に英国とポルトガルの間で結ばれた貿易条約により、この木材の輸入量が急増したことも、その流行に拍車をかけました。
また、ブラジリアン・ローズウッドの代替品として、同じく特徴的な縞模様を持つゴンカロ・アルヴェス(ゼブラウッド、またはタイガーウッドとも呼ばれる)も注目を集め、18世紀中頃から英国に輸出されていました。
トラファルガーチェアのデザインには、セイバー・フット(Saber Foot)と呼ばれる剣のようにカーブした脚部(前述のサーベルレッグと同意味)や、背もたれ上部にロープを模した持ち手が採用されており、装飾性と実用性が巧みに融合しています。
また、クロスバンディング(Crossbanding)という木目を活かした装飾技法も特徴的で、家具の縁取りなどに用いられました。
このような海洋をモチーフにした意匠は、1805年にネルソン提督がトラファルガーの戦いでフランス・スペイン連合艦隊に圧勝し、イギリスの海軍がその誇りを広く称えられた背景を反映しています。
実際、このチェアは「ネルソン・チェア」とも呼ばれ、ネルソン提督自身も好んで使用していたと伝えられています。
トラファルガーチェアは、19世紀初頭のイギリス社会において、帝国の誇りやナショナリズムの象徴として広く愛されました。
その歴史的背景と装飾的な美しさは、当時のリージェンシー様式の流行とも深く結びつき、イギリスの家具デザインにおいて重要な位置を占めています。
【Caryatid(カリアティッド)】
カリアティッド(Caryatid)は、建築において柱の役割を果たす装飾的な女性像のことを指し、その起源は古代ギリシャにまで遡ります。
特にアテネのエレクティオン神殿に見られるカリアティッド像は有名で、優雅で力強いその姿は、女性像が建築物の構造を支える象徴として歴史に刻まれました。
ルネサンス期やネオクラシシズム時代を経て、リージェンシー様式の家具において重要な装飾要素の一つとなり、テーブルやキャビネットの脚部のデザイン、寝台のポストなどに用いられ、力強さと優雅さを兼ね備えたデザインを演出しました。
カリアティッドのような古典的モチーフが多く採用することで、古代ギリシャやローマの美学を復興させることを目指しました。
[オルモル]
このタイプの装飾は、金に似せて金メッキされた
金属合金で作られており、オルモルは家具だけでなく、
他の種類の骨董品にも装飾的な装飾として縁や角に
採用されます。また、時間の経過とともにエッジが
摩耗するのを防止するために、家具などの
コーナー部分の保護を目的として使用されました。
共通のモチーフにはリボン、弓、葉、小花などがあります。
広くエンパイアとリージェンシーの作品で使用されました。
[モノポデイア]
建築用語で複合語 MONOは単一の(モノレール等)、
PODIAはPODIUMの複数形で台、土台という意味です。
古代エジプトの神殿建築に見られたもので、一柱の神の
彫刻をあしらった柱や壁が土台となり屋根を支えている
構造です。リージェンシー期に入り、ネオクラシカルの
モチーフが更に古代エジプトまで遡り、エンパイヤー様式に
発展していきました。特に、動物の頭と爪脚からなる足形は、
椅子、テーブル、サイドボードなどの支柱として
リージェンシースタイルで大流行しました。