TOPICS
貝のデザイン ─ ロココに受け継がれた優雅さと豊穣の象徴
~目次~
1.はじめに:クラシック家具に宿る“貝”の魅力
2.貝の装飾がもつ意味
3.貝装飾が使われる家具の特徴
4.メゾン・ド・マルシェで出会える“貝のデザイン”
5.コーディネートのコツ
6.お手入れのポイント
7.まとめ
1. はじめに:クラシック家具に宿る“貝”の魅力
クラシック家具を見ていると、曲線の流れの中にそっと“貝”の形があしらわれていることがあります。
控えめなのに、ひとつあるだけで家具全体にやわらかい表情と上品さが生まれる
——そんな不思議な魅力を持つモチーフです。
貝のデザインは、ロココ様式を象徴する装飾のひとつ。
木象嵌や彫刻として施されるその形は、
「内側から湧き出る美しさ」「豊かさ」「繁栄」
を象徴し、18世紀フランスの宮廷文化の中で愛され続けてきました。
家具の脚先、天板の縁飾り、キャビネットのトップなど、さりげない場所に取り入れられ、
空間に柔らかなリズムを与えてくれます。
ロココ期の流れるような曲線に寄り添う“貝”のフォルムは、現在のクラシック家具にも受け継がれ、
上品で華やかな雰囲気をつくる大切な要素となっています。

2. 貝の装飾がもつ意味
■豊かさと繁栄の象徴
西洋ではホタテ貝が“恵み”の象徴。
巡礼、祝祭、食卓など、幸運と結びつくモチーフとして大切にされてきました。
家具に取り入れられると、
「満ちていく」「豊かになる」
そんな視覚的なあたたかさが生まれます。
金箔や磨かれた木目との相性も抜群で、お部屋の格をやさしく引き上げてくれます。
■ロココ様式の象徴 ― ロカイユ
ロカイユは壊れた貝殻・岩・水流
を抽象的にとらえた装飾スタイル。
直線中心だったバロック末期の重厚感から解放され、
遊び心のある軽やかなデザインへと進化しました。
ミラーやコンソールの上部、チェストの幕板などに使われ、
まさに“ロココの象徴”といえる装飾です。

■守護・再生・内なる美のモチーフ
貝は外の世界から“内側を守る器”。
そこから転じて守護、再生、内面の美しさ
といった象徴が生まれました。
巻貝=愛が育つ
ホタテ=豊穣と神聖
といった寓意もあり、象嵌や浅彫りで取り入れると控えめなのに意味深いアクセントになります。

3. 貝装飾が使われる家具の特徴
時代別の特徴
● ルイ15世(ロココ)
• ロカイユの渦巻きが主役
• 非対称の曲線
• ミラー・コンソール・コモードに多用

● 英国ジョージアン/クイーン・アン〜チッペンデール
• 控えめな“シェル彫り”が脚の膝(ニー)に入る
• 背板にも小さな貝が刻まれ、ほどよい気品を演出

● 19世紀ヴィクトリアン(ロココ・リヴァイバル)
• 多様な様式が復活
• ミラーや小家具で再びロカイユがよく使われる
部位別の代表例
• ミラーの上飾り(クレスト)
視線が上に伸び、空間が広く見えます。

• コンソール・コモードの幕板(エプロン)
中央の貝が“重心”を作り、曲線脚へ視線が流れます。
• 脚部(ニー)
シェル彫りが、近づいた時にふっと愛らしさを感じさせます。
• 引き出し前板
結び目のように配置され、家具の顔立ちを整えてくれます。
• 象嵌(マルケトリー)
木目の濃淡で描かれた巻貝は、控えめな物語を添えます。
4. メゾン・ド・マルシェで出会える“貝のデザイン”
当店では、上質なロココ・クラシック家具のなかから、
美しい貝装飾をまとったアイテムを丁寧にセレクトしています。
実際に手で触れると、彫りの深浅、陰影、光の反射が驚くほど奥行きをもって見えるんです。
取り扱い商品
• ロココ調ミラー
上飾りのロカイユが顔まわりを柔らかく照らし、玄関・ドレッサーに最適。

• ブックケース
中央のシェルが空間のアクセントに。

• ティーテーブル(ニーのシェル)
静かな贅沢感。読書コーナーや寝室にぴったり。

• 小家具・雑貨
小さな貝の装飾が、空間の“優しい整え役”になります。

5. コーディネートのコツ
1. 色の調和
アイボリー×ゴールド、パール感のあるベージュ、くすみピンクなどが好相性。
2. 素材のリズム
木の深い艶に、ガラス・真鍮・鏡面を重ねると貝の陰影が際立ちます。
3. 配置の高さ
ミラーのクレストは視線より少し上に。
コンソールの貝は腰高〜目線に。
4. 壁と床の仕上げ
モールディングやクラシックラグを合わせると、貝の曲線が空間全体と調和します。
6. お手入れのポイント
• 金箔・彩色部
こすらず、刷毛か柔らかい布でそっと埃を払うだけ。
• 木部
基本は乾拭き。象嵌部分は水分厳禁。
• 金具
磨きすぎないように軽く乾拭き。
この小さな積み重ねで、貝の陰影は長く美しく保たれます。
7. まとめ
貝のモチーフは、ロココの時代に洗練を極め、
守護・再生・豊かさ・内なる美
という豊かな意味を宿して今も愛されています。

クラシック家具を暮らしに迎えることは、
単なる装飾ではなく、
“美しさを大切にする文化を受け継ぐこと”。
もしお部屋に「あと一歩の品格」が欲しいと感じたら、
まずは貝のデザインをひとつ取り入れてみてください。
ミラーでも、チェストでも、脚のワンポイントでも。
小さな意匠が、空間の空気をふんわりと、そして上品に整えてくれます。
店頭では、サイズ感や動線、今のお部屋との相性まで丁寧にご案内いたします。
写真では伝わりづらい“ロカイユの呼吸”を、ぜひ実物で感じてみてください。




