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【A.E.Williams】

 

イギリスを代表する伝統工芸ピューター細工。

数ある工房の中で最も古く確かな技術を持つ工房がA.E.Williamsです。

その確かな伝統美から今日では数々の映画や

ドラマにもA.E.Williamsの製品が使われています。

「パイレーツオブカリビアンでジャックスパロウが杯を掲げるシーン」

「ハリー・ポッターでホグワーツ魔法魔術学校の食堂シーン」

「ゲーム・オブ・スローンズでラニスターの護衛役ブロンがお酒を飲むシーン」

 

どれも時代背景や世界観が中世から近世で、

この時代のヨーロッパでピューターの食器などが

盛んに使われており、劇中でピューター食器をよく見かけます。

 

特に2011年に放送が始まり2019年4月最終章の

世界同時放送が待たれる大人気テレビドラマの

ゲーム・オブ・スローンズでは、食事のシーンも

多いことから特にA.E.Wの製品を目にします。

皆様これから映画やテレビドラマをご覧になる際には、

ピューター製品にご注目ください。

 

≪ ピューター製品とA.E.Williamsの歴史 ≫

1642年 イギリスの絶対王政による国教会の強制に対する

ピューリタンの信仰の自由、特権的商人を保護する

重商主義に対するジェントリ層の不満などが

要因となって清教徒革命と呼ばれる内乱がはじまる。

(1290年頃からピューター製品が存在していると

言われているが、井戸から発見されたスプーンを

製造した貴重な鋳型は現在もA.E.Wが保有している。)

《1666年》 パン屋のかまどから出火して4日間にわたって燃え続け、

ロンドン市内の家屋およそ85%が焼失したロンドンの

大火がおこる。これによりピューター名誉組合が入る

ギルドホールも被災し、ピューターに関する

記録の多数を焼失する。

《1779年》 現A.E.Wの祖先であるトーマス・ウイリアムスが

ウェールズとの国境付近(ブリストル周辺)で食器の事業を始める。

《1780年》 紅茶に対する減税によって、一気に紅茶ブームが訪れる。

これにより紅茶はイギリスを代表する飲料になり始める。

この時代、トーマス・ウイリズムスはピューター製

ティーセットの製作を始める。

《1802年》 息子リチャードが事業に参加する。

《1803-1815年》 ナポレオン戦争時代、ピューターは

25万人の軍服のボタンとして重用される。

 

《1835年》 トーマスが死去し、リチャードが事業を継ぐ。

《1838年》 リチャードの息子アーネストが父の歩みを追い、

若干11歳で見習いとして事業に参加する。

《1840年》 アーネストはピューターを広めるためバーミンガムに

事業を移す。父リチャードはブリストルに残り

食器づくりを存続させる。

《1860年》 ピューターメーカーとして当時名高かった

「Yates」や「Birch」のお抱え工房として、

アーネストはメーカーマークなしのビアマグや

ジョッキ作りに勤しむ。

A.E.Wは企業として成長し始め、従業員も多く雇うようになる。

《1865年》 リチャードが死去し、アーネストが

事業を継ぐ。従業員はいたが、ウイリアムス家の者は、

アーネスト一人となる。

《1890年》 アーネストの息子アルバート(32才)

が事業に参加する。

《1912年》 RMSタイタニックが処女航海にて沈没する。

タイタニックで使用されたピューターのカトラリーは

約100年後の2010年にA.E.Wによって再び作られる。

《1914年》 第一次世界大戦勃発により、

若い従業員が戦地へ派遣され、A.E.Wの業務は鈍化する。

《1926年》 ロンドンのリッツ(リッツカールトンホテルの本店)

がオープンし、ピューター製ティーセットを提供する栄誉を受ける。

《1930年》 アルバートの息子トーマスが事業に参加する。
《1932年》 A.E.Wの顧客であるBBC(Britishi Broadcasting Corporation)が設立される。

《1939年》 第二次世界大戦勃発。A.E.W家からトーマスが

空軍・軍需工場に派遣される。トーマスは夜間にA.E.Wの仕事を続け、工房を守る。

《1945年》 ハリーデイとの提携を解除し、トーマスは弟アルバートA.E.Wを続ける。

《1963年》 トーマスの義理の息子バリー・ジョンソンは

ターニング(削り出し)といわれる工程のスペシャリストになり、

A.E.Wの技術レベルを引き上げる。

《1966年》 トーマスの息子デイビットがA.E.Wに

参加する。このデイビッドが現A.E.Wの党首になる。

《1967年》 提携企業だったハリーデイが事業を終え、

A.E.Wは全ての鋳型を引き取る。

《1977年》 20世紀前半、銅と真鍮の多くの製品を世に送り出したPearson Page Jewsbury社の鋳型をA.E.Wが全て引き取る。

《1984年》 バリーの息子ステファン・ジョンソンが事業に参加する。
《1985年》 ミュージカル・プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュによりレ・ミゼラブルの公演が始まり、A.E.Wがピューター小道具などを提供する。

《1987年》 トーマスが現役を離れ、息子デイビットとバリー・ジョンソンがA.E.Wを運営する。
《1990年》 A.E.WがJames Yatesの鋳型を買い取る。A.E.Wのアンティーク鋳型が1500個を超え、その中でも500年以上前の型がいくつもある。
《2000年》 中世が時代背景のグラディエーターにA.E.Wのピューター製品を提供する。

《2011年》 バリー・ジョンソンが現役を引退する。
《2014-16年》 うめだ阪急百貨店の英国フェアにサム・ウィリアムスが来日し、製作実演する。
《2014年》 安倍晋三首相がロンドンを訪問した際に、ロンドン市長からA.E.Wが製作したピューター製の馬の像が送られる。

《2015年》 ステファン・ジョンソンの娘レベッカがA.E.Wに参加する。

≪ イギリスにおけるA.E.Wの評価 ≫

上記年表でわかるように、A.E.Wは230年以上も昔から質の良いピューター製品を製作し続けており、イギリス文化の発展に貢献してきました。今日では商業的な視点とならび、国の文化的な財産を守っているともいえます。これらの功績により、現A.E.Wはピューター名誉組合(The Worshipful Company of Pewterers)の一員になっており、現A.E.Wの家系はロンドン名誉市民として登録されています。

≪ ピューターの特徴 ≫

ピューターは錫を主成分とし、これにアンチモンや銅を加え調整した合金です。その組成は様々ですが、標準的なピューターは91%の錫、7%のアンチモン、2%の銅を含んでいます。かつては鉛を添加したものもありましたが、現在は鉛を含まないものが一般的です。

ピューターの鋳物は銀白色の美しい金属光沢をもち、柔軟で適当に強さもあるため、工芸品には最適です。

≪ ピューターの歴史 ≫

ピューターの歴史は古く、諸説ありますが約4000年前のエジプトの墓からも

ピューター製品が出土しているようです。

また一説には最も古いピューター製容器は紀元前1500年にさかのぼるという話もあります。

しかし、本当の意味でのピューター工芸はローマ帝国占領下のイギリスではじまりました。

ローマの兵士たちはイングランドのCornwall鉱山から産出する錫からピューター製品を

鋳造して使用していました。この鉱山は当時世界最大の錫、鉛、銅の鉱山で、

中世からルネッサンスにかけてイギリスの主要な輸出品となりました。

中世になるとピューターの人気は急速に高まっていきました。1290年頃、

イングランド王エドワード1世は300ものピューター製の皿や塩壺を所有していたそうです。

1348年にはロンドンが世界最大のピューター産地となり、

イギリスではピューター製品に関する品質基準が定められて厳格な管理が行われました。
その結果、英国製ピューター製品に対する高い評価が定着しました。
ヨーロッパでピューター製品が一般の人々に使用されるようになったのは

15世紀頃のことです。また16世紀末までにはピューターギルドがパリやマルセイユなど

各地に設置されました。そして、17世紀にはピューター製品はその最盛期を迎えます。

しかし、18世紀になると磁器製テーブルウェアの大量生産が始まり、

ピューター製品の人気は翳りをおびてきます。

さらには1840年にバーミンガムのエルキントン商会が電気メッキの特許を取得し、

銀の電気メッキ製品が生産されるようになり、ピューター製品は日常の食卓からは姿を消していきました。

しかし、日常品としての生産量が減少する一方で、

クラフトマンシップに支えられた良質な工芸品としての評価が確立していきました。

その重要な契機となったのが19世紀後半のウィリアム・モリスが主導した

アーツ・アンド・クラフツ運動とそれに続くアール・ヌーヴォーの流行でした。

この時代にはピューター鋳造による優れた作品が製作されたそうです。

≪ ピューターは高価 ≫

金属を希少性から分類すると「貴金属」「レアメタル」「ベースメタル」のように分類できます。

ピューターはベースメタルに分類され、価格は銅の4倍、アルミニウムの13倍となっています。

 

 

 

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